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土木学会 岩盤力学委員会 ニュースレター [No.5 2004.9.24] 印刷用pdf
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[巻頭言]
「21世紀における岩盤工学の方向性」
1991年に米国のある大学の卒業式で学長が行ったスピーチを思い出した。「21世紀は情報技術(IT),環境,バイ
オ,エネルギー,食糧,そして多文化交流の世紀になり,バランスの取れた科学技術こそが未来を切り拓く鍵にな
る」と。1990年代はわが国には厳しい時代となったが,最近の科学技術動向や,アジア,特に中国の台頭を目の当
たりにして,かの学長の洞察力には驚かされるばかりである。現代のように不透明で先を見通せない時こそ,物事
の本質を見据えて時代の方向性を洞察することが極めて重要であると痛感する。
岩盤工学のあり方については,土木学会岩盤力学委員会の特別小委員会や企画小委員会で議論されている。キー
ワードは,1)現場やマーケットニーズの把握,2)基準化や技術データの蓄積と技術の継承,そして3)海外市場への
展開,であろう。翻って,我々は21世紀の大きなトレンドを踏まえて,的確に岩盤工学の方向性を洞察できている
だろうか,また,今後労力を傾注するべき方向性を間違えてはいないだろうかと自問する日々である。世界は単一
の市場経済に移行し,メガコンペティションの真っ只中にある。建設産業だけが例外であるわけはなく,高度な科
学技術を駆使した高付加価値なサービスを社会に提供できる組織のみが生き残れる時代である。世の中の動向に大
きくアンテナを張って方向性だけは的確に判断し,専門分野のみにとらわれることなく,明確な目標を掲げて努力
していきたいと思っている。
企画小委員会委員 武内邦文(大林組)
1.岩盤力学委員会研究小委員会テーマの公募
岩盤力学委員会では、新規研究小委員会のテーマを公募します。活動開始時期は2005年5月以降です。下記
の要領により、奮って応募願います。テーマ採択後、研究小委員会メンバーも公募することになりますが、公募手
続き、および研究小委員会の運営の詳細等につきましては、土木学会のホームページ(http://www.jsce.or.jp
/committee/rm/index.html)に掲載している内規・内規細則をご覧下さい。
記
1) 応募要領
小委員会名、研究課題・趣旨、小委員長候補者、委員数、半数程度の委員候補者(委員の
公募に応じるであろう候補者)、活動開始時期、応募者または応募組織の連絡先を明記の
上、研究小委員会設置申請書をお送り下さい。
2) 送付先
岩盤力学委員会企画小委員会幹事
原子力発電環境整備機構 技術部 高橋美昭
〒108-0014 東京都港区芝4-1-23
電話: 03-4513-1515, e-mail:
ytakahashi@numo.or.jp
3) 応募締切
2004年12月15日(水)
4) その他
1)研究小委員会活動開始までのスケジュール
設置決定 : 2004年12月下旬
メンバーの公募 : 2005年3月下旬
メンバー公募の締切 : 2005年4月下旬
活動開始 : 2005年5月以降
2)情報伝達方法
設置決定、メンバーの公募等の情報伝達は、学会誌会告の他、学会ホームページ、電子メ
ールで行い
ます。電子メールをご希望の方は、岩盤力学委員会企画小委員会幹事までご連
絡下さい。
2.トピックス
今回のトピックスは下記の3件を紹介します。以下はその概要です。
本文をpdfファイルでご覧ください。
1)「台湾新幹線プロジェクト」 Click!
株式会社大林組 深谷正明
(概要)
現在台湾では,南北交通の主役となるべく台北−高雄間で高速鉄道(台湾新幹線,延長約350km)の建設が進
んでいる。新聞報道などを通じて,日本の企業が車両・電気・軌道などの受注を果たし,日本の技術が高く評
価されたことをご存知の方も多いと思う。土木工事については,日本のゼネコン3社が地元企業とのJVで5
工区の受注を果たしている(さらに,新しく設置される6駅すべての建築工事が日本のゼネコン単独あるいは
地元企業とのJVにより落札された)。土木工事は2000年4月に着工し,工期は約4年で,2004年4月現在で土
木工事はほぼ完了し,軌道・機電工事が2005年末の開業を目指して鋭意進行中である。
筆者はこの土木工事を受注したゼネコンに所属し,設計担当として現地で業務に従事した。本ニュースレタ
ーでは,筆者が担当した工区(特にトンネル工事)を中心に,台湾新幹線建設工事の概略をご紹介したい。本
工事については日本企業が多く参画していることから,いずれ様々な正式報告がなされると思われるので,本
報告はその予備的なものとしてご理解頂ければ幸いである。
2)「San Roque水力発電プロジェクト(フィリピン)」 Click!
関西電力株式会社 瀬岡正彦
(概要)
サンロケ多目的プロジェクトは,フィリピンの首都マニラ北方180kmのルソン島,アグノ川中流に位置する。
1998年3月に着工したこのプロジェクトは,昨年5月に完成し,ダム効用の一つである発電が商業運転を開始し
た。プロジェクトは,灌漑,発電,洪水制御そして水質改善の4つの効用を有する総事業費約1,000百万US$の
多目的事業である。発電を担う事業会社として,サイス・エナジー(50.05%),丸紅(42.45%),関西電力(7.5%)
の出資によるサンロケパワー社(San Roque Power Corporation)を現地に設立し,国際協力銀行と日本の市中
銀行から形成される融資銀行団からプロジェクト・ファイナンスにより資金を調達した。電力購入者はフィリ
ピン電力公社(National Power Corporation)で,25年間の買電契約期間の後に発電所を譲渡するいわゆる
BOT(Build-Operate-Transfer)の形態を導入している。筆者は,関西電力から本プロジェクトに参画したので,
本報告ではそのプロジェクト概要を紹介する。
3)「Finite Element Analysis of Geotechnical Rehabilitation Works」 Click!
(地盤構造物の修復技術に関する有限要素解析)
Annamaria Cividini *, Giorgio Borgonovo** and Giancarlo Gioda*
*:Politecnico di Milano **:Consulting Engineer
(概要)
有限要素法は,多くの工学の現場で応力解析に使われ,設計者が構造物の寸法や力学挙動を設定するのに役
立っている。
しかしながら,これらのやり方は数値解析の持つ潜在能力を十分に引き出しているとはいえない。実際,数
値解析は応力解析における標準的な手計算や簡易手法を縛るだけということになっている。
有限要素法は,構造物の数値モデルを開発するに際して様々な条件下における解を与えることができる。こ
のことによって,構造物の挙動をより深く理解し,設計や与えられた構成則,関連したパラメータなどを改良
することが可能となろう。
原位置測定の結果に対する確定論的あるいは確率論的な逆解析は,地盤工学における数値解析モデルのこの
ような“柔軟な”利用の良い例である。
本報告では,このような利用法を地盤構造物の修復作業に適用した例を示す。数値モデルは既存の情報(当
初の寸法,力学特性,等)に基づいて開発されており,これらのパラメータは可能な限り原位置測定の結果に
従って修正される。このキャリブレーションを経て数値モデルは,修復デザイナーによって提案される各種の
予備解析に適用される。キャリブレーションの結果は,可能な技術的選択肢を与える基礎になっており,最も
適切な手法を選択する有益な補助手段となっている。
本報告では,数値解析法の2例の適用例を示す。これらは,それぞれ,橋脚のアンダーピニングと斜面のゆ
っくりとした時間依存変形挙動の安定化に適用したものである。
著者紹介:
Gioda博士とCividini博士はご夫婦で同じ大学(ミラノ工科大学)の同じ学科で教授職を務める魅力的なカップル
であり,逆解析の先駆的な研究や地盤構造物の数値解析で世界的に高名な研究者です。ミラノ
は,大理石造の大聖堂やスフォルツァ城,ミケランジェロの最後の晩餐などの古い文化と,銀行業やファッ
ションを始めとした現代産業が調和した北イタリアの中心都市です。本報告にあるように,古い構造物の修
復作業はイタリアの大きな課題であり,日本の技術者とも交流が図られるよう期待されます(市川康明)。
3.書籍の紹介
今回の書籍等の紹介は下記の2件を紹介します。
1)岩盤不連続面関係の書籍紹介
企画小委員会委員 川崎 了(北海道大学)
岩盤不連続面に関連して過去約10年間に発行された教科書的な書籍について調べてみました。その結果の概要
について,一覧表にまとめて紹介します。
(Click!)。
2)地球化学関係の教科書紹介
企画小委員会委員 太田岳洋(鉄道総合技術研究所)
岩盤工学に関連する地球化学的な諸問題に関連する書籍について,過去約10年間に発刊されたものを調べて
みました。そのうち,特に役立ちそうな書籍の概要について,一覧表にまとめて紹介します。
(Click!)。
4.会議予定
国内の会議
1)会議名: 3rd ARMS 2004 (Asian Rock Mechanics Symposium)
日時:2004年11月30日(火)〜12月2日(木)
場所:京都市・京都国際会議場
リンク:http://lakers.kuciv.kyoto-u.ac.jp/~arms2004/
2)会議名: 第34回岩盤力学に関するシンポジウム
日時:2005年1月6日(木),7日(金)
場所:土木学会「土木会館」二階講堂,会議室
リンク:http://www.jsce.or.jp/committee/rm/index.html
海外の会議
1)会議名:6th International Symposium on Rockburst and Seismicity in Mines
日時:9-11 March 2005
場所:Perth(Australia)
リンク:http://www.acg.uwa.edu.au/pdf_files/RaSiM6.pdf
2)会議名:2nd International Meeting on Clays in Natural & Engineered Barriers
for Radioactive Waste Confinement
日時:14-18 March 2005
場所:Tours(France)
リンク:http://www.andra.fr/meeting2005/
3)会議名:2005 MRS Spring Meeting
日時:28 March – 1 April 20055
場所:San Francisco(USA)
リンク:http://www.mrs.org/meetings/spring2005/index.html
4)会議名:EUROCK 2005
日時:18-20 May 2005
場所:Brno (Czech Republic)
リンク:http://www.ugn.cas.cz/data/eurock05/conference.htm
5)会議名:11th International Conference of IACMAG, the International Association
of Computer Methods and Advances in Geomechanics
日時:June 19-24, 2005
場所:Torino, Italy
リンク:http://www.iacmag2005.it/homepage.htm
6)会議名:20th World Mining Congress(第20回世界鉱業会議)
日時:7-11 Nov. 2005
場所:Teheran(Iran)
リンク:http://www.20wmce2005.com
その他の会議については,岩盤力学委員会ホームページの「会議予定」をご覧下
さい。
5.法人会員のページ
土木学会法人会員による「岩盤工学等の分野で得意とする技術情報等の紹介」を目的とした「法人会員のページ」
を設けました。今回は東京電力株式会社からの紹介です。
「国際大ダム会議(ICOLD)第72回年次例会(韓国・ソウル市)におけるPre-Study Tourの東京電力叶_流川プロジェクト見学について」
東京電力株式会社 南 将行
国際大ダム会議第72回年次例会が,2004年5月16日から21日までの間,韓国ソウル市において開催されました。
その中で日本における年次例会前の見学旅行(Pre-Study Tour)の一部として,5月13日に東京電力株式会社の
「神流川揚水発電プロジェクト」をご見学いただきました。今回のPre-Study Tourでは,本会議に出席される
方々の内,総勢29名が参加されました。見学会当日は,約半日の行程で,下部ダム,地下発電所,上部ダムの
順にご見学いただきました。また,見学会の中では,当プロジェクトの岩盤力学等の各分野における技術開発
の内容や経緯についてご説明しました。
当日は,非常に広範囲の移動を伴うスケジュールでしたが,日本のダムや地下発電所の建設技術ならびに揚
水発電について,ご理解いただけたものと思っています。
(詳細と添付資料(「全断面TBMによる水圧鉄管路長大斜坑掘削」,「地下発電所空洞情報化設計施工」)をご覧ください)
6.その他
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・ 本ニュースレターに対するご感想・ご意見を募集いたします。今後の編集に役立てていきたいと思います
ので,下記のニュースレター編集担当までご連絡をお待ちしています。 |
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・ さらに,トピックスの一般投稿及び研究紹介,岩盤力学に係わる読者からのニュース,読者の声,学位
論文の紹介などを募集いたしますので奮ってお寄せください。ご連絡は下記のニュースレター編集担当まで
お願いいたします。 |
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・ また,本ニュースレター及びHPで土木学会法人会員による「岩盤工学等の分野で得意とする技術情報
等の紹介」を目的として「法人会員のページ」を設けました。次回以降,掲載を希望される法人会員は下
記のニュースレター編集担当までご連絡願います。 |
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・ 現在,企画小委員会では各研究小委員会等の協力を得ながら岩盤力学委員会ホームページ(HP)の充
実を図り積極的な各種情報発信に努めています。HP更新に伴い,各委員会の活動状況,終了した研究小委
員会の報告書や国内外の会議予定等も掲載しましたのでご覧ください。
リンク:http://www.jsce.or.jp/committee/rm/iinkai_index.html |
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・ ニュースレターのバックナンバーは岩盤力学委員会ホームページをご覧下さい。
リンク:http://www.jsce.or.jp/committee/rm/news.html |
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ニュースレター編集担当: 高橋 美昭(岩盤力学委員会企画小委員会幹事)
gijutsubu@numo.or.jp
アドレス変更・配信中止のお申込みについても上記までお願いします。
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【第6号の予定】
・トピックス
1)プルリア揚水地下発(インド)プロジェクト
2)タイにおけるプロジェクト紹介
・書籍・論文の紹介
1)リスクマネジメントに関する研究紹介
2)放射性廃棄物処分関係の書籍紹介
3)岩盤浸透関係の教科書紹介
【編集後記】
この度,ニュースレター第5号を発信することができましたが,今回も盛りだくさんな情報を発信できますことに対
し,編集,執筆にご尽力くださいました方々に心から感謝申し上げます。
今回のトピックスでは,台湾新幹線やフィリピンの水力発電など,話題のプロジェクトをご紹介できたことに加え,
地盤構造物の数値解析で世界的に高名なGioda博士とCividani博士のご夫妻に有限要素法に関する報告をいただけたこ
とが,特徴に挙げられると思います。
また,書籍等の紹介もよりいっそう充実してきましたので,第6号も皆様に興味を持っていただけるよう編集に努
めたいと思います(高橋)。
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