岩盤斜面研究小委員会(第四期)


層雲峡(1987)・越前海岸(1989)・豊浜トンネル(1996)・上高地(2009)などのように,岩盤斜面の崩落や落石は尊い人命を奪ったり,道路や鉄道が長期間にわたって不通となったりするなど,社会に大きな影響を与えることが多い.また,2018年7月豪雨では,多くの斜面崩壊,岩盤斜面の崩落が発生した.土木学会では,従前から岩盤斜面の崩落問題に取り組んでおり,大規模岩盤崩落に関する技術検討委員会報告書(1997),研究小委員会による出版物(1999)や活動報告書(2004,2006)などをとりまとめてきた.

平成25年に岩盤力学委員会に岩盤斜面研究小委員会を設置し,岩盤斜面が抱える問題点や課題について議論を重ねてきた.研究小委員会では,以下の点を解決することにより,斜面災害を軽減し国民の安全を確保することが求められている.
① 膨大な岩盤斜面の中から危険性の高い斜面を抽出する手法の確立
② 抽出した斜面の安定性を評価する手法や技術の精度向上
③ 岩盤の挙動を安価で的確に把握するモニタリングシステムの開発
④ 岩盤のモデル化や解析のために必要な崩壊箇所の物性値や挙動データの蓄積
⑤ リスクマネジメントによる合理的な対策工の決定方法
⑥ 斜面の点検・メンテナンス手法の高度化

本小委員会は,常設の研究小委員会として発足し,岩盤斜面に関する知見や研究成果を継続的にとりまとめ,社会や会員へ迅速に提供・発信できる体制を整えていくことを目指している.第I期では,上記①及び②について取組み,文献の収集,崩壊・落石の事例収集,既往の落石実験や斜面モニタリング結果の分析・検討などを実施することによって,岩盤斜面の安定性評価のガイドラインを土木学会として提言できるよう活動してきた.第二期では,⑥について議論・研究がなされてきた.第三期では,斜面の点検・メンテナンス手法の高度化と岩盤のモデル化や解析のために必要な崩壊箇所の物性値や挙動データの蓄積と数値解析について検討を実施してきた.第四期は,本小委員会のこれまでの成果物である「岩盤崩壊の考え方」および「岩盤斜面の維持管理」について,内容の見直しを行なったうえで,より有効に社会や会員に活用してもらうための発信方法を検討する.内容見直しとしては,事例や技術の拡充,追跡調査結果の反映,基準値類の時点修正の反映等を実施する.成果物の発信方法については,会員へのアンケート等により活用のされかたを調査したうえで,オンラインで閲覧・検索しやすい形式を検討する.

活動状況

令和3年度
・第1回キックオフミーティング: 令和4年1月21日(金) オンライン開催
・第2回キックオフミーティング: 令和4年3月29日(火) オンライン開催
・第1回委員会: 令和4年4月15日(金) ハイブリッド開催(オンライン+土木学会会議室)
・第2回委員会: 令和4年5月20日(金) ハイブリッド開催(オンライン+土木学会会議室)
・第3回委員会: 令和4年6月17日(金) ハイブリッド開催(オンライン+土木学会会議室)

委員名簿

会務 氏名 所属
委員長 中島 伸一郎 山口大学(株)
副委員長 小山 倫史 関西大学
委員 日外 勝仁 (国研)土木研究所
委員 梶 修 ブイ・エス・エル・ジャパン(株)
委員 菊地 輝行 (株)JPOWER設計コンサルタント
委員 岸田 潔 京都大学
委員 後藤 敬彦 東京電力
委員 櫻井 皆行 ハイテック(株)
委員 田山 聡 西日本高速道路(株)
委員 富樫 陽太 埼玉大学
委員 中井 卓巳 (株)アーステック東洋
委員 中川 光雄 (株)地層科学研究所
委員 西金 佑一郎 (公財)鉄道技術総合研究所
幹事 橋本 涼太 広島大学
幹事 船津 貴弘 (株)安藤・間
委員 馬 貴臣 応用地質(株)
委員 三浦 健一郎 基礎地盤コンサルタンツ(株)
委員 宮﨑 祐輔 京都大学