「岩盤力学におけるDX活用検討小委員会」の活動概要
2023年4月1日
岩盤力学委員会
岩盤力学におけるDX活用検討小委員会(小委員長 西本吉伸(J-POWERテレコミュニケーションサービス(株)))
活動の趣旨
土木分野においても,労働力不足,効率化,安全性の向上などの多くの視点から,デジタル技術の活用による,仕事の仕方の改善が望まれ,官民それぞれ多様な立場での取組みが進められている.
国土交通省においては,インフラ分野のDX (デジタル・トランスフォーメーション)推進本部を設置し,「インフラDX」の取組みに着手し,建設部門でのDX導入を進めている.
その設置趣旨は以下のように示されている.
社会経済状況の激しい変化に対応し,インフラ分野においてもデータとデジタル技術を活用して,国民のニーズを基に社会資本や公共サービスを変革すると共に,業務そのものや,組織,プロセス,建設業や国土交通省の文化・風土や働き方を変革し,インフラへの国民理解を促進すると共に,安全・安心で豊かな生活を実現すべく,省横断的に取組みを推進するインフラ分野のDX推進本部を設置する.
既に,広くデジタル化技術が検討され,コンクリート構造物等の点検・維持管理技術であるとか,河川の流出予測等が多用な検討が進み,一部実装も進んでいる.
岩盤を対象とした分野においても,地形などの変化に着目した斜面安定性評価に関連する取組みなども進められているところであるが,岩盤における検討事例や適用事例は,構造系のもの比べると相対的に少ないと感じるところである.その原因のひとつは,岩盤は人工構造物以上に,着目すべき特徴が多岐にわたり,取組みに難しさがあると考えられる.
そこで岩盤力学委員会においては,岩盤分野でのデジタル化技術の適用推進や,それらを踏まえた業務の効率化・改善への寄与を念頭に置き,岩盤分野でのDX推進に係わる検討に着手することとした.
今回の取組みにおいては,ある程度具体的なアウトプットができることを念頭にし,比較的データが様式化され,取り扱う情報(画像なども含む)が体系化されて整理されている,トンネル切羽評価の問題を対象にすることとした.また実装という視点では,技術の信頼性はもちろんのこと,工事関係者が広く活用できるような汎用性も重要と考えた.
活動状況
令和5年度
令和5年12月5日 報告書を発行しました.
活動期間
2021年6月 ~ 2024年3月
委員構成
J-POWERテレコミュニケーションサービス(株) | 西本 吉伸 | 小委員長 |
関西大学環境都市工学部 | 北岡 貴文 | WG1リーダー |
清水建設(株) | 淡路 動太 | WG2リーダー |
(株)高速道路総合技術研究所 | 中野 清人 | |
(株)大林組 | 畑 浩二 | |
(株)奥村組 | 黒武者 貴幸 | |
鹿島建設(株) | 宮嶋 保幸 | |
大成建設(株) | 坂井 一雄 | |
戸田建設(株) | 若竹 亮 | |
西松建設(株) | 纐纈 善孝 | |
(一社)日本建設機械施工協会 | 井野 裕輝 | |
東京電力HD(株) | 森 文章 | |
(株)熊谷組 | 濵田 好弘 | |
飛島建設(株) | 熊谷 幸樹 | |
(株)オリエンタルコンサルタンツ | 高根 努 | |
国立研究開発法人 土木研究所 | 菊地 浩貴 | |
(株)安藤・間 | 辰巳 順一 鶴田 亮介 |
活動概要
以下のテーマごとに調査・検討を行った.
(1) 技術動向調査
すでに試行的に検討が進められている手法や,研究的に取組まれている内容を調査し,手法の内容,どのようなレベルにあるのか,またどのような課題があるのかについて,当小委員会のメンバーが取組んでいる内容の調査、また土木学会に投稿された論文調査を行い、その内容を調書にまとめ傾向を取りまとめた.
(2) 標準データによる検討
最近の実際のトンネル工事における切羽観察において取得された写真データと切羽観察記録を収集し,内容を分析し標準データを作成した。
さらにその共通的な標準データを使用し、小委員会内の各社が使用しているAIシステムにより、切羽評価の推定を実施し、再現性に代表される手法の有効性や,有効となる条件などの検討を具体的なデータにより行った.
なお切羽観察記録や写真の収集については,発注者である国土交通省及び高速道路会社の使用許諾を得て利用させていただいた.
(3) 実用化に向けた課題検討
標準データの検討や各社での試行上の経験を踏まえ,AIによる切羽評価の実用化に向かた課題を抽出し、その解決策等について各委員の見解を取りまとめた。
課題抽出については以下のような視点で実施した。
- 評価手法の信頼性向上
- 教師データの品質
- 適用範囲
- ブラックボックス化への対応
- AIを活用すること自体の有効性の評価
- 必要なシステム・デバイス
- 切羽データの共有化・オープン化
- 経済性
- 技術力の低下への懸念
- AI活用の人材育成
- その他
(4) 課題解決に向けた各機関に対して望む事項
課題解決のためには、関係各機関の協力が不可欠である。このため、発注機関、施工会社、システムを提供するベンダー、学会のそれぞれに対し、課題解決のためにどのような取組みが望まれるかについて、委員の意見を集約し取りまとめを行った。
委員会報告
報告書を掲載します。
なお、この小委員会活動の報告会は、第50回岩盤力学に関するシンポジウムにて、セッションを設けて実施致します。
第50回岩盤力学に関するシンポジウムにおける発表時の配布資料を以下に掲載致します。
2024年1月11日 13:00~14:30の予定で実施します。
岩力シンポ報告資料①(イントロダクション)